大阪母子医療センター視察
10月18日から20日までの日程で、健康福祉常任委員会の県外視察に行ってまいりました。
初日は、妊婦がどのような状況であっても、救急の受入を拒まないために、周産期医療の地域連携体制の構築に取り組む、大阪母子医療センターの視察に行ってまいりました。
専門医がおらず処置が困難であることやかかりつけ医がいないことを理由に、妊産婦の救急医療におけるたらい回しや受け入れ拒否が、全国的に問題となったことがありました。
2007年、奈良県の妊婦が11病院に受け入れを拒否され、搬送途中で死産となりました。また、2021年では本県において、新型コロナウイルスに感染した妊婦が、入院先が見つからないまま、自宅での出産を余儀なくされ、新生児が死亡するという痛ましい事案が発生したことは記憶に新しいところです。
周産期医療および小児医療の基幹施設として全国で最も早く設立された同センターは、「母と子、そして家族が笑顔になれるよう、質の高い医療と研究を推進する」との基本理念のもと、日々高度な専門的医療を提供されています。
1977年、大阪産婦人科医会が中心となり、大阪で産まれた赤ちゃんの命は必ず救うという崇高な使命感のもと、危険な状態で産まれてきた胎児の搬送を円滑に行うための連絡調整の仕組みとして、新生児診療相互援助システム(NMCS:Neonatal Mutual Co-operative System)を発足しました。
また、1982年には府内にある3基幹病院にて、新生児用のドクターズカーが配備され、産院や助産院と新生児用の集中治療室をもつNMCS協力施設との間を緊急搬送することが可能となります。
2021年の新生児搬送は約940件。ドクターズカーには医師が乗車し、酸素投与や挿管などの処置が行われます。
さらに、1987年には、妊産婦に救急救命の必要性が出た場合、母体搬送を円滑に行うための連絡調整の仕組みとして、産婦人科診療相互援助システム(OGCS:Obstetrical and Gynecological Co-operative System)も発足されました。
母体救命の必要が生じた場合、生児搬送コーディネート施設(大阪母子医療センター含む)に連絡すると、ネットワーク化されているOGCS協力施設の空床状況を確認し、受け入れが可能か確認します。そして、受け入れが可能となれば、搬送に向けてドクターカーが出発します。
緊急母体搬送事例の搬送依頼時には、命を救うことを第一とするため、母体救命か胎児救命か、緊急帝王切開が必要かをまず確認するそうです。
(厚生労働省「大阪府の周産期医療体制」より)
新生児医療の発達により、母体搬送の数も増えてきているとのことで、2003年のOGCS搬送は1207件だったのに対し、2022年は2147件へと、この20年間で約1.8倍に伸びているのが実態です。
また、近年では、メンタルヘルス不調や精神科疾患を併せ持つ妊婦のほか、南海トラフ等を想定した広域災害への対応、パンデミック感染など、設立当初では想定していなかったニーズも生まれており、さらなる機能強化・充実が求められているようです。
【参考資料】
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